産科麻酔 / 小児麻酔
産科麻酔
- 診療
産科麻酔は、帝王切開の麻酔管理のみならず無痛分娩管理や周産期メンタルヘルスとの関わりなど近年注目されている分野です。
365bet体育投注_亚博足彩app-官网|直播附属病院ではこれまで、主に医学的適応の無痛分娩管理を行ってきましたが、2023年より低リスク妊婦への希望無痛分娩を開始し、その全症例を麻酔科専門医のみで構成される産科麻酔チームで管理しております。
- 無痛分娩
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無痛分娩は痛みを和らげるだけではなく、循環変動の抑制や産後の体力温存など、これまで帝王切開が選択されてきた合併症妊婦に経膣分娩を提供することができます。
当院では、「お腹の張りは感じるが、痛みはなく、しっかりといきめる」程度に麻酔薬を調整し、分娩進行中に麻酔下で歩行可能な”Walking epidural”を行っています。その実現には、確実なスキルや局所麻酔薬に関する知識はもちろん、分娩に関する知識、産科医や助産師とのコミュニケーションが重要です。
また、IUFD(Intrauterine fetal demise)やTOP(Termination of pregnancy)の妊婦に対する無痛分娩を行っています。頸管拡張時の鎮静、分娩時の鎮痛を担当し、産科?精神科?麻酔科と専門科を横断して多角的に診療を行っております。
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- X線透視下硬膜外麻酔
- 高度肥満妊婦は全身麻酔での気道管理に難渋し致死的になることがあり、脊椎幹麻酔が推奨されますが、しばしば施行困難なため全身麻酔を回避できないことがあります。
当院ではBMI40kg/m2を超える妊婦に対して、事前にX線透視下に硬膜外カテーテル留置を行っています。そのため、確実な鎮痛効果を得ることが可能となり、緊急帝王切開時の全身麻酔を回避することが可能となります。
学術活動
- Kimizuka M,et al. Effects of anesthetic agents on contractions of the pregnant rat myometrium in vivo and in vitro. J Anesth. 2021;35(1):68-80.
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日本産科麻酔学会第127回学術集会
*君塚基修│脊髄髄膜瘤術後妊婦に対して硬膜外麻酔で管理した帝王切開術の麻酔経験
*木井菜摘│胸腰椎固定術後で下肢欠損のため義肢装着した妊婦の無痛分娩
*池島まりこ│当院におけるWalking epiduralの取り組み?Walking epidural再考?
*伊原彩季(当科専攻医)│高度肥満妊婦に対してX線透視下硬膜外カテーテル留置後に帝王切開を行った一例
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日本周産期麻酔学会第2回学術集会
*木井菜摘│大腸菌による母体敗血症性エンドトキシック症候群に対しエンドトキシン吸着療法を施行し救命した1症例
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日本産科麻酔学会第126回学術集会
*池島まりこ│冠動脈疾患妊婦の心拍出量モニタリングFloTrac?を用いた無痛分娩管理
小児麻酔
- 臨床
- 手術で麻酔を必要とするのは圧倒的に成人が多く、小児専門施設や小児症例の多い大学病院?総合病院以外では小児の麻酔を担当する機会はそう多くはありません。
経験数が少ないこと、体が小さく、成人に比べて体の予備力が少なく麻酔管理に関連した余裕が小さいことから小児の麻酔は苦手だという麻酔科医もいます。
体重は1kg未満の小さな赤ちゃんから100kgを超える大きな子まで、体重だけで見ても大きな幅がある中、安全な麻酔管理が求めらます。
また成長過程にある小児や保護者が不安なく医療を受けられることも大切なことです。
小児の麻酔に関しては全国的に統一されたものはなく、各施設でベストと思われる方法が採用されています。
特に合併症のない小児外科?耳鼻科?泌尿器科の小手術は道内の関連病院でも行われていますし、特殊な手術は大学付属病院と北海道立子ども総合医療?療育センター(コドモックル)という小児専門施設で行われています。
術前の不安から手術中の安全、術後の痛みにまで配慮した麻酔法を考えて管理しています。
- 教育
- 大学付属病院ではコドモックル経験者を中心に、小児麻酔を安全に管理できるよう教育を行なっています。
コドモックルには初期臨床研修医は在籍していませんが、集中的に多くの小児症例を経験し、先天性心疾患や合併症を持つ症例の管理を学ぶことができます。
また、他施設や小児科医はじめ他の診療科の研修を受け入れており、専門医と組むことで小児の気道管理や鎮静を理解し安全な管理を身につけることができます。
- 研究
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当科の小児麻酔チームでは現在、以下の3つのテーマを中心に、小児の周術期医療の質を高めることを目的とした研究に取り組んでいます。
小児気道管理
小児の気道は、解剖学的に成人とは大きく異なり、より身長で専門的な管理が求められます。そのため、小児の麻酔には高い技術と豊富な知識が必要です。しかし、すべての医療施設に小児麻酔を専門とする麻酔科医が常駐しているわけではなく、時に気道管理においてトラブルが発生することもあります。
当科の小児麻酔チームでは、こうした課題に対処するため、「J-PEDIA」や「CRICKET」など、小児の気道管理に関する全国的?世界的な大規模研究に積極的に参画しています。これらの研究を通じて、小児の周術期における気道管理の質を向上させ、すべての子どもたちが安全に手術を受けられる環境づくりを目指しています。
構造的に成人とは大きく異なる小児の気道管理においては、高度な技術と知識が求められます。しかし、小児の手術は小児麻酔を専門とする麻酔科医が勤務しない医療施設においても実施されるため、気道管理上トラブルとなるケースが存在します。当科小児麻酔チームでは、J-PEDIAやCRICKET研究といった、小児気道管理に関する大規模研究に積極的に参加し、周術期における小児の気道管理向上を目的として研究活動を行っています。
新生児用超小型IABPの開発
IABP(大動脈内バルーンパンピング)は、心臓の機能が低下した際にその働きを補助する医療機器で、成人の心臓病治療では一般的に使用されています。しかし、小児や新生児に対しては、体の小ささゆえに適応できるサイズのIABPがこれまで存在せず、開発も困難とされてきました。
近年、医療機器の技術革新により、新生児にも使用可能な超小型IABPの開発が現実味を帯びてきました。当科小児麻酔チームでは、先天性心疾患をもつ小児を主な対象として、この新たな医療機器の開発研究を進めています。この装置が実用化されれば、治療の選択肢が広がり、小児心疾患に対する治療成績の向上が期待されます。さらに、本研究プロジェクトを通して得られた小型化技術は、成人用機器の性能向上にも貢献する可能性があります。
小児集中治療支援AIツールの開発
小児集中治療室(PICU)では、高度な知識と判断力を必要とする治療が日々行われており、治療の質の均一化が課題となっています。そこで当科小児麻酔チームでは、AI(人工知能)を活用し、血圧や脈拍などのバイタルサインのデータから患者の状態を評価し、適切な治療法を提案する、診療支援ツールの開発に取り組んでいます。
このAIツールは、限られた人数で運営される小児集中治療の現場で、医師の意思決定を支援し、安全かつ効率的な治療を実現することを目指しています。将来的には、小児医療以外の分野への応用も視野に入れ、さらなる発展を目指しています。
近年の主な業績
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論文業績
1. Sakai W, Chaki T, Tachibana S, Ichisaka Y, Nawa Y, Nawa T, Yamakage M. INJEX50 could improve the success rate of local anesthesia for arterial cannulation in the pediatric intensive care unit: a randomized, double-blind, single-center study. Paediatr Anaesth. 2024;34:1029-35.
2. Sakai W, Chaki T, Nawa Y, Oyasu T, Ichisaka Y, Nawa T, Asai H, Ebuoka N, Oba J, Yamakage M. Head cooling wrap could suppress the elevation of core temperature after cardiac surgery during forced-air warming in a pediatric intensive care unit: a randomized clinical trial. J Anesth. 2023;37:596-603.
3. Sakai W, Chaki T, Tachibana S, Nawa Y, Yamakage M. Subcutaneous tunnelling of pediatric peripheral nerve block catheters: a novel technique to minimize catheter damage. Can J Anaesth. 2021;68:159-60.
4. Sakai W, Tachibana S, Chaki T, Nakazato N, Horiguchi Y, Nawa Y, Yamakage M. Safety of an improved pediatric epidural tunneling technique for catheter shear. Paediatr Anaesth. 2021;31:770-7.
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